風鈴の音

風鈴の音 詩私と詩
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どこか蒸し暑い夏の頃

毎年毎年、異常気象でこれが尋常だと思えてくる

わたしはアイスバーを食べながら縁側に腰をかけている


ふと、何処からかチリンチリンと涼しげな音がする

音の出所は不明だが幾つかの処で聴こえてくる

夏の暑さを少しの間忘れさせてくれる音に人は惹かれていく


またどこかで聴こえてくる

チリンチリン

テレビの中の有名人は一生懸命謝っている

チリンチリン

春から咲く準備をしてきた昼顔たちが綺麗に咲いている

チリンチリン

わたしは真面目に生きてきた


またどこかで聴こえてくる

チリンチリン

みんなが大好きなアイドルが週刊誌の一面を飾っている

チリンチリン

夜帰ると見知らぬ靴が置いてある

チリンチリン

わたしは涼しげな音を聴いているだけ


またどこかで聴こえてくる

チリンチリン

男はどうしようもない嘘を並べる

チリンチリン

女は隙を見計らって携帯をのぞいた

チリンチリン

わたしは何もしらない


またどこかで聴こえてくる

チリンチリン

毎日飲み会なんて真っ赤な嘘

チリンチリン

メールにハートが沢山ついていた

チリンチリン

わたしは何も悪くない


セミの声が聞こえなくなる頃

昼顔たちも花をすぼめていく

もう頃合いねと風鈴はしまわれる

チリンチリン


わたしは最後に音を鳴らして他人事のようにその場を去った

来年も風鈴の音は聴こえるかしら

そんなことを思いながら平然と生きていく

チリンチリン


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